コールセンターのスクリプトが応対品質を決定する

1.電話応対のスクリプトの効果

コールセンターにおいて、電話応対の品質を決定する大きな要素の一つはスクリプトです。

これは、インバウンドでもアウトバウンドでも同じです。インバウンドではお客さまの用件を正しく把握して効率よく解決する、アウトバウンドでは見込み客・成約を獲得する、というようにコールの目的は異なりますが、スクリプトの重要性は変わりません。

今回はこのコラムで、スクリプトの重要性について改めて考えてみたいと思います。

2.スクリプト活用によってコールセンター全体がレベルアップ

最初に、スクリプトの役割について確認したいと思います。スクリプトは、言うまでもなく電話応対において、お客さまと話をする際の会話内容を規定する「台本」で、以下のようなメリットをもたらします。

(1)応対が統一化され、会話のばらつきを抑えられる。
(2)コミュニケーターのスキルや経験にかかわらず、一定レベルの対応が実現できる。
(3)通話時間をある程度そろえることができる。
(4)トレーニングや研修時間の短縮化につながる。

当社boosterでは、コールセンターの様々なプロジェクトに携わる業務機会が多いのですが、スクリプトを改善することによる効果として、第一に挙げたいのが「センター全体の応対品質の底上げ」です。

どのようなコールセンターでも、コミュニケーターの経験レベルやスキルにはバラつきがあるのが一般的ではないでしょうか。一握りのトップレベルのコミュニケーターは質の高い応対で優れた成績をあげることができますが、それは元々持っている個人の資質や技量によるものが大きく、他のスタッフが真似をしようとしてもなかなかうまくいきません。

一方で、応対品質の中間レベル層・低レベル層に属するコミュニケーターは、シンプルかつ基本的な課題を抱えている場合が多く、適切な支援をすれば課題を解決できる可能性が十分にあります。

通常、中間層・下位層のコミュニケーターはトップクラスと比較するとボリューム(人数)が圧倒的に多いため、この層を一段階レベルアップすることで、センター全体の品質向上につなげることができます。

この時に特に役立つのがスクリプトです。

スクリプトは、お客さまとの会話にダイレクトに反映されるため、他の施策と比較して短期間で影響が現れやすいという特徴があります。

つまり、スキルが十分でないコミュニケーターを多く抱えているセンターほど、スクリプトの活用によりスピーディーかつ幅広い効果が得られるのです。

3.スクリプト=「人間味のない対応」にはならない

様々な効果が得られるスクリプトですが、ときにネガティブな意見も聞かれます。

最近はいろいろなタイプのものが活用されつつありますが、一般にスクリプトというと、会話の語尾まで細かく記述されたものが多いため、それを読みながら話すと、「人間味のない応対になるのではないか」「個々のお客さまへの対応ができなくなるのではないか」と懸念を感じるのです。

そのため、スクリプトはあくまでも新人研修のガイドライン的なものとして位置づけ、応対の現場での本格的な導入はしていないケースもよくあります。

しかしながら、お客さまと電話で会話しながら、お客さまのご要望を理解し、気持ちをくみとり、わかりやすい言葉(トーク)に組み立てて話をすることは、簡単ではありません。

その場で言葉をスムーズに引きだすことは難しいのですが、スクリプトをあらかじめ用意しておけば、コミュニケーターは気持ちに余裕が生まれ、それらを読むだけで一定と満足が得られるようになります。また、その方が、お客さまの理解も得やすくなるでしょう。

スクリプトは活用の仕方によって効果が大きく変わってきます。

私たちはスクリプトを「楽譜」だと捉えています。どんなに優れたスクリプトがあっても、内容を理解せず、練習もしなければうまく使えるようにはなりません。

そのため、スクリプトを、自分の言葉として話せるようになるには反復・練習することが必須です。

このように、「人間味のない応対」になってしまうのは、トレーニングや練習不足が原因であるという可能性があります。

私たちがスクリプトを現場に導入する際には、スクリプトに沿った会話を「規定演技」としてマスターしてもらい、一定レベルに到達した後は自分なりにアレンジして会話ができるよう指導します。

そうすることで、気の利いた言葉もとっさに使えるようになるため、スクリプト導入=人間味のない対応という図式は成り立たないのです。

また、「うちは商品数が多いのでスクリプトを作るのは難しい」「お客さまの属性やご要望が多岐にわたる」などの理由でスクリプト導入に消極的なセンターもあります。

しかし、そうであるならば、なおさらスクリプトによるサポートが重要になってくるでしょう。

実際に当社がスクリプト改善のコンサルティングなどを手掛けたコールセンターでは、いくら商品数が膨大であっても、丁寧に業務整理をすると問い合わせ種別で見ても、いわゆるコールリーズンはそれほど多くないことがあります。

また、スクリプト作成は多くの時間を必要なこと、作成が難しいことなどから、後回しになっているケースがありますが、なんとかセンターの事情にあった形式や内容を模索することができれば、高い効果を得られます。

4.スクリプトの学習に有効な『1対N型ロールプレイング』

スクリプトを習得するにあたって、欠かせないのがロールプレイングによるト電話応対のレーニングです。

ロールプレイングは、2人一組になって読み合わせる方式で実施されるのが一般的ですが、boosterでは、コールセンターの電話応対研修で『1対N型ロールプレイング』を実施しています。

『1対N型ロールプレイング』とは集合研修の際に行うもので、トレーナーがお客さま役となり、受講生複数人が一人のコミュニケーター役となって、みんなで一緒にスクリプトを練習します。

『1対N型ロールプレイング』とは集合研修の際に行うもので、トレーナーがお客さま役となり、受講生複数人が一人のコミュニケーター役となって、みんなで一緒にスクリプトを練習します。

円になって、スクリプトの言葉が書かれた箱をひとつずつ順番に読んでいくスタイルです。このとき、一人ひとりの受講生が声を出す時間は限られますが、他の人が話すのを聞くことで、お客さま感覚を磨くことができます。

早口な言い方を聞くと「早くてわかりづらいな」とか、声が小さい人の電話応対では「元気がなさそうだな」などと感じます。

また、他の人の優れた話し方を聞くと、「いいな、真似してみよう」となるのです。「話す」プロセスと合わせて、「聞く」機会を通じて、どのように話すのがよいのかを感覚的に取り入れていくトレーニング方法です。

また、ロールプレイングの最中はトレーナーが一人ひとりの強みや弱みに合わせてアドバイスをするのですが、個々の話し方に対して、教育・研修のトレーナーがどうアドバイスするかを聞くことで、学習効果がさらに高まります。

当社では、これまで業種・商品の異なる多くのコールセンターにスクリプト導入やトレーニング方法の見直し、応対品質・研修マニュアル等をサポートしてきましたが、劇的な効果をあげた例も少なくありません。

次回は、具体的なスクリプトを用いて応対品質をあげたケースを一つ紹介したいと思います。

コールセンター・コンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

スクリプトの重要性を理解し、顧客満足やセールス向上に繋がるスクリプトの作成を目指した研修です。また、boosterオリジナル『1対N型ロールプレイング』のやり方も学びます。

boosterのコールセンター現状診断は、応対品質のみならず、運営面における課題も把握し、顧客満足と事業貢献を両立するコールセンターづくりをお手伝いします。