コールセンターのモニタリング/ミステリーコールの分析のしかた

1. 標準的な分析の方法

コールセンターの品質評価のベーシックな手法であるモニタリングとミステリーコールの違いやポイントについては前回ご説明しました(https://www.booster-tokyo.co.jp/column/quality/column095_monitoring-mysterycall/)。

それでは、調査によって得られた結果を最大限活用するためにはどうしたらよいのでしょうか。モニタリングの個別の結果はそれぞれのオペレーターのスキルアップとコールセンター全体の品質管理のために活用しますが、ここではモニタリングとミステリーコールにおいて、コールセンター全体の傾向について把握する際の数字の読み方についてご説明します。

調査結果を分析する主な手法は大きく分けて以下のとおりです。

(1)総合結果評価:
当社では、多くの場合、約20の評価項目について5段階の評価を行い、全項目が5だった場合を100%とした達成率で評価する方式がスタンダードです。(業種やコール種類などにより、項目数や何段階で評価するかは変動します)この時、そのセンターのオペレーターひとりひとりの達成率を平均化したものを総合結果として評価します。おおまかに分けると、80%以上になると非常に品質が高い、50~60%レベルで普通(可もなく不可もなく)、50%を割ると品質が低いという傾向があります。

(2)項目別平均評価:
評価項目ごとに平均評価を計算し、そのセンターの強味やどの項目が特に改善の必要があるかを特定することができます。

(3)項目間相関分析:
各評価項目間の相関を調べ、ある項目の評価が他の項目の評価にどのように影響を与えるかを理解します。例えば、寄り添い感があるという評価を得た応対では、話し方のスコアが高いという相関があったりします。

(4)ベンチマーク分析:
総合結果や項目別結果について、ベンチマークを設定して分析する方法です。モニタリングの場合は内部であらかじめ設定した値と、ミステリーコールの場合は競合他社の結果と自社の結果を比較し、他社との差異を把握します。これにより、自社の強みや改善点を明確にし、競争力を高めるための方針を立てることができます。

(5)時系列分析:
時間の経過に伴う評価の変化を調査し、改善の進捗状況を把握します。特定の施策やプロセスの変更が改善にどのように影響を与えたかを理解するために役立ちます。

2.平均値がすべてではない

評価結果の分析について説明してきましたが、基本的にここまで説明したものはすべて平均値をベースとしたやり方です。平均値は全体を把握するのによく使われますが、サンプル数があまり多くない場合には極端な値の影響を受けてしまいます。コールセンターで実施するモニタリングやミステリーコールの場合、膨大なサンプルを確保するわけにいかないケースも多いですから、偏りが出ないようにするためには平均値に加え、以下の方法も検討する必要があります。

(1)中央値の使用:
平均値の代わりに中央値を使用することで、外れ値の影響を受けにくくなります。中央値はデータの中央に位置する値であり、外れ値の影響を受けにくい特性があります。

(2)分布の分析:
データを階級に分け、各階級の度数(頻度)を分析する方法です。例えば、総合結果なら、0~10%、10~20%といった具合で、10ポイント刻みで出現頻度に表すと、ボリュームゾーンがどこなのかが把握しやすく外れ値の影響をうけにくくなります。

これらの手法を使用することで、データの分布の特徴や偏りなど、より正確なデータの理解と解釈が可能になります。モニタリングやミステリーコールは、コールセンターの傾向を把握し、改善策を立案するうえでの基本となるので、結果を適切にとらえることが肝要です。品質管理を実施する場合、最初にウォッチすべき指標を設定しておくことが重要なので、初回の調査設計時に何を知りたいのか、そのためにはどんな数字を取ることが必要なのかをしっかりと検討する必要があります。

いかがでしょうか。現在実施している品質管理において、本当に知りたい内容が把握できるか、いちど見直してみるのも良いかもしれません。

コールセンターコンサルタント 古館良子

サービスのご紹介

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