コールセンター向け研修は集合研修とOJTをセットで考えよう

1.電話応対研修のゴールは、「わかる」を「できる」に導くこと

弊社 boosterでご提供しているコールセンター向けの研修は大きくわけて2つあります。ひとつはコミュニケーター(オペレーター)向けの研修で、もうひとつはスーパーバイザーやセンター運営、品質担当者を対象としたコールセンターの管理者研修です。

いずれの研修においても、「わかる」だけでなく、「できる」ようになることをゴールとして、実践的な学びを重視しています。


たとえば、コミュニケーター向けの研修でよく目にするのが、「ラポール構築の重要性(※)」です。


お客さまと信頼関係を築くことの大切さについて学ぶコンテンツですが、その概念をいくら理解したところで、実際のお客さまとの通話でそれらが成し遂げられなければ意味がありません。

※ラポール構築とは:ラポールとは「親密な関係」、「信頼関係」と訳されますが、コールセンターにおいてのラポール構築とは、お客さまとコミュニケーターの間に良好な信頼関係を築くことを指します。

そこで、私たちは研修を企画する際、「できる」ことを目標にして、カリキュラムでは全体の6~7割を体験学習にあてています。それでも与えられた時間は限られており、研修時間内だけで習得レベルを目指すというのは至極難しく、集合研修とプラスして、その後のOJTまでを一連の学びとする、コールセンター向けの教育プランをご提案し、実践しています。

2.コールセンター 管理者向けの研修を考える

では、管理者向けの研修はどうでしょうか。コールセンターで実施されている研修といえばコミュニケーター向けのものばかりで、管理者層への教育は全体的に不十分な印象があります。


また、その一方で「コールセンターはスーパーバイザーが鍵を握る!」といったこともよく耳にしますが、オペレーションを管理し、またコミュニケーターを指導育成する立場である管理者層の教育は必須であり、またその質にもこだわりたいものです。


弊社でご提供している管理者向けの研修を一部ご紹介しますと「スーパーバイザー研修」や「スクリプト作成研修」、品質担当者向けの「モニタリング・フィードバック研修」などがあります。


また、最も実施頻度が高いのは、ご依頼をいただいたコールセンターにむけてフルカスタマイズをした研修です。

コールセンターによって、管理者に期待されている役割や日常業務などが大きく異なることと、個々のセンター事情を踏まえる必要もあり、そのときの課題や目的に応じてカリキュラムを組み立てています。


その上で、研修を実施する際は十分な配慮も必要です。受講生である管理者層はコミュニケーターからリーダーなどを経て、現在の職に就いていることが多いのですが、これまで特に管理者向けの教育を受けてこなかったケースがほとんどです。


その場合は、当事者としてはみよう見まねで頑張っているものの、自信のなさや苦労を抱えていることが推察されます。このような点も十分に配慮した上で、学習をスタートさせています。


そして、コミュニケーター向けの研修と同様に、明日からの業務に役立ち、また活かせる学びでなくてはいけません。そのためには、研修を受けた日をスタート地点として、その後の日常業務のなかで実践と振り返りを繰り返し、学んだことの定着を目指す必要があります。

3.【事例】「モニタリング・フィードバック研修」後のOJT

ここで、あるコールセンターでの「モニタリング・フィードバック研修」の事例をご紹介しましょう。


「モニタリング・フィードバック研修」は主に品質担当者を対象として、既存業務の質の向上を目的に実施されます。

多くのコールセンターでは、定期的にモニタリングとフィードバックをしているものの、稼働がかかっている割には成果が得られない。また、フィードバックの場においては、フィードバックをする方も受ける方もどこか遠慮がちで、充実した学びの場となっていないことも多いようです。


フィードバックは予め伝える内容を整理し、コミュニケーターのレベルや気持ちに寄り添いながらも気づきを促し、変化に導くといった難易度の高いコミュニケーションです。


その一方で、会議室などの個室で行われることが多いため、先輩担当者の様子を真似するということもできません。


新人コミュニケーターの教育では、ロールプレイングなどの練習をしないまま現場デビューさせることがないように、フィードバックも事前の練習が必要です。


先日実施をした「モニタリング・フィードバック研修」では、理想イメージをつかむことを目的に繰り返しのロールプレイングをしました。それでも、一般的に2人1組で行うロールプレイングは練習でしかありませんので、コミュニケーター役の人が不機嫌な様子を取ることもなく、円滑なやりとりで進むことがほとんどです。


しかし、現実はといえば、フィードバックの最初から最後まで目も合わせず、蚊の鳴くような声でしか反応しない人がいたり、「納得いかない」と言われればその思いを尊重しながらも、丁寧に意見交換をする必要があったりと様々です。


コミュニケーターが自分の音声を録音したものを聞いて振り返るように、このときは、フィードバック担当者も自身の活動を客観的に見返すための仕組みを作りました。
具体的には、個室で行われるフィードバックのやりとりを後で振り返ることができるよう、録音をしました。


この企画の検討段階においては、「コミュニケーターが萎縮するのでは?」といった心配もありました。しかし、その点については、フィードバック担当者育成を目的として録音をする旨を周知し、了承いただけない場合は連絡をもらえるよう通達をしていただきました。


そうすると、録音を好まないコミュニケーターはほとんど出ませんでした。どちらかというと、「そうだよね、私たちが録音されている音声を聞かれているのと同じことだよね」といった意見も多かったようです。


その録音された素材をもとに、モニタリングのフィードバックをしたコールセンターの担当者が、チェックリストに従って自らの活動を確認をしたり、品質担当者同士でお互いの録音音声を聞き合うなどしたりと、質の向上を目指しました。


その成果としては、品質担当者は人材を育成するといった職種柄のせいか、気づきのレベルが深く、大きな変化を得るのにさほど時間を要することはありませんでした。


このように、管理者向けの教育・研修であっても、集合研修とその後のOJTを組み合わせた学習は非常に有効であり、ほんとうに必要だと実感したコールセンター研修事例でした。


いかがでしたでしょうか。コールセンター向け研修といっても、電話応対のカリキュラムや実施方法、伝え方、OJTなどの組み合わせは無限の可能性があり、その都度、ベストを追求することが大切だと考えています。

今後のコールセンター運営において、少しでもお役に立てれば幸いです。


コールセンター・コンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

boosterの研修は、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れ、楽しみながらアタマとカラダで吸収することができるカリキュラムです。研修を検討した背景に着目し、明確なゴールを見据えた学習をご提案します。

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