教育・研修直後の2週間が鍵

よくコールセンターのマネジメント層の方に「研修直後2週間が鍵です」とお伝えしています。これはコミュニケーターが研修からコールセンターの現場へ戻ってきて、「2週間をどう過ごすのか」によって決まるからです。

つまり、その2週間は学習したことが定着レベルに達するかどうか、結果に大きく関わる重要な期間です。

以前、某コールセンターで、研修後のフォローの有無によって学習効果がどのくらい違うのかを比較・検証することができました。仮に、研修後に何もフォローしなかったグループをA、研修後に手厚いフォローがあったグループをBとしましょう。

Aグループは管理者の人事異動の影響で、研修後に何もフォローすることができませんでした。コミュニケーターは研修から戻ってきたその時点から、それまで自分がしてきた話し方を変えて、研修で学んだ話し方を試してみる必要があります。

それは恥ずかしさなどもあり、管理者が想像する以上に勇気や努力が必要です。そのような努力をしなくても、誰もみていない、何も言わないのであれば、いつもどおりの話し方をするのも無理はありません。

コミュニケーターはお客さまの要望を把握し、画面上で履歴を検索し、何をどう話そうかと考えながらコールをしているため、ただでさえ気にすることがたくさんあるのです。

そんな現場で、成長への取り組みをコミュニケーターの自助努力に任せるのには限界があります。

一方で、フォローができたBグループには、通常はモニタリング評価をメインに行っている品質管理チームが現場に入り、リアルモニタリングをするなかで、コミュニケーターの努力を承認し、うまくいかないコミュニケーターには温かく声をかけました。

また、現場SV(スーパーバイザー)は朝礼、夕礼ごとに「今日は◯◯をしてみましょうか」「こんな変化がでてきましたよ」と声をかけ、また内線電話を使ったロールプレイング練習などを展開して、「学びのサポート役」に徹しました。

AとBグループの2週間後の変化は私たちが想像する以上に大きな差がありました。オペレーションの現場は常に多忙で、細かい作業が存在します。学習への声かけどころか、エスカレーションや質問対応に追われるのも現実だと思います。

ただ時間をかけなくても、表情やアイコンタクトだけで「やってるね!」と伝えることもできます。

管理者は「いまの環境で何ができるのか」という視点にたち、今できることを積み重ねるだけでも、着実にその取り組みは成果となってあらわれます。

なぜならば、コミュニケーターは常に管理者の動きや意識して見ているため、「本気なんだな」という熱意をしっかりと伝えることができれば、あとは自らが動いてくれることも期待できます。

『鉄は熱いうちに鍛えよ』とよく言われますが、実はコミュニケーター育成も同様です。

ミステリーコールでは、応対品質を数値化して業界内での自社のレベルを把握し、また競合相手の傾向を探るなどを目的として実施します。分析では個別のスキルごとに強み、弱みを明らかにします(※ここでのスキルとは電話応対に必要な技術を指します)。

自社の理想のコールを実現するにあたって、今力をいれるべきスキルは何か、業界トップの会社はどんなスキルが優れているのか、というような内容です。

ミステリーコールの後には分析結果をもとにトレーニングプログラㇺを設計、実施します。ここで注意しなければならないのは、改善したいスキルによって、トレーニングの効果が現れるまでの時間が異なる、ということです。

例えば、「第一声の名乗りが徹底されていないためにオープニングの評価が低い」という課題が発見されたとします。この場合、名乗りを徹底すれば「オープニング」の評価が上がるので、比較的早いタイミングで修正が可能です。

これに対して、「お客様に対する共感の姿勢が弱い」という課題が見つかった場合、すぐに改善するのは難しいです。なぜなら、「共感を示しなさい」と漠然と指導するだけでは改善は難しく、共感を示す場面を具体的にあげ、共感を示すための表現を供給したうえで、抑揚や声の調子まで指導する必要があるからです。

こうしたトレーニングが一つ一つ成果を上げるまでには一定の時間が必要となるため、「共感の姿勢」が改善されるまでは半年程度かかるケースも多々あります。

また、「スピード」「間」などは一見シンプルですが、癖になっている場合が多く、一時的に修正されてもすぐに戻ってしまうスキルです。これらは地道な指導を根気強く継続する必要があるため、やはり定着までには時間がかかります。

このように、改善に着手し始めてから成果が見えるまでの期間は、スキル(課題)によって差があります。ですが、半年に1回など定期的にミステリーコールを実施しているセンターの場合、その都度の報告の際にトレーニングプランを見直してしまうことも少なくありません。

そうなると、せっかく指導内容がコミュニケーターに浸透しつつあったのに、方針の転換によってまた一からやりなおしになり、結果的に改善まで余計に時間がかかる可能性すらあります。

したがって、スキル改善を目指す場合、長いスパンで結果をウォッチしなければならないスキルもあることを念頭に置いたうえで、トレーニング設計をすることが重要だと考えます。

まずは、教育・研修直後の2週間は定着レベルに達するように、スキルアップの実践トライをさせて見てください。きっと効果が出るはずです。

ご理解頂きましたでしょうか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

コールセンターの要であるスーパーバイザーへの研修は、センターの実情に合わせて柔軟にカスタマイズした研修カリキュラムをご提供します。「わかる」を「できる」に変える実践型トレーニングです。

「感じのよい応対」を目標として、学習効率の高いカリキュラム。「わかる」を「できる」に変えるため、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れた実践型の研修です。