コールセンターにおける品質管理の基本

1. なぜ応対品質の管理が必要なのか

コールセンターにおいて応対品質の管理は重要なテーマであり、多くのセンターが、日々膨大な労力と費用をかけて取り組んでいます。しかしながら、「思ったように品質が上がらない」とご相談をいただくケースも少なくありません。応対品質を向上させるにはどうしたらよいのでしょうか。

まず、応対品質がなぜ重要なのかを整理してみましょう。

主な理由としては、①顧客満足(CS)の向上/顧客ロイヤリティの醸成、②ご指摘・クレームの削減、③運営コストの削減、④業績への貢献などが挙げられます。

①は伝統的にコールセンターが担ってきた役割と近しいのですが、応対品質は顧客満足に深く影響し、それによってその企業や商品自体へのロイヤリティーに直結します。「コールセンターは企業の顔」などと言われますが、「感じのよい応対」は非常に重要な要素です。また、②ですが、応対の技術を磨くことで、顧客からの苦情や問い合わせの数を減らすことができます。逆に言えば、質の悪い応対では、不必要に通話時間が長引いたり、コミュニケーターのモチベーション低下を招き、結果として、③の運営効率が下がってしまうのです。さらに、問合せの際にお客さまにあった商品をお勧めしたり、継続注文をお受けするといった一歩進んだ応対を実施することにより、④企業の業績への貢献も可能なのです。

このように、応対品質を向上することで、さまざまな方面でメリットが見込めます。

2.品質管理のためのサイクル

それでは、応対品質を向上させるには、どうしたらよいのでしょうか。

大前提として、コールセンターの応対品質は生き物のようなものです。日々変化しますし、放っておいて自然に上がるものではありません。さらに、応対品質は付け焼刃的な一時の施策で向上するものではなく、マンパワーと時間をかけて取り組むことが必要となります。その代わり、じっくり取り組めば必ず効果が見込めるのです。

品質管理の基本サイクルは以下のとおりです。

品質管理の取り組みの核となるのはモニタリングです。モニタリングは、「実際の応対の音声を聞いて評価すること」で、多くのセンターで実施されていますが、このとき、重要なのが評価基準です。「なりたい応対」「理想の応対」を実現するためにクリアしなければいけない要素を盛り込んだものが評価基準です。ベーシックな項目は多くのセンターで共通となりますが、そのセンターの目指す理想像によって細かな項目設定や評価基準の設定が違ってきます。例えば、「親身で温かみのある応対」を目指したければ、「会話の最初に相応しいオープニング」や「笑顔の感じられる話し方」が必須になってくる。また、テクニカルサポートで「お客さまの理解と納得」をゴールに設定する場合は、「真のニーズを含めた質問力」や「わかりやすい説明」が重要になるといった具合です。

評価基準が定まったら、コミュニケーターに評価基準を共有します。モニタリングは応対品質のレベルを測るためのものですが、「理想の応対」を実現するためのものですから、コミュニケーターにどんな応対を目指しているのか、そのためには何が必要かを理解させることが肝要です。そのうえで、モニタリングを実施します。個々のコミュニケーターがどんな応対をしているのか、自社のコールセンターの「理想の応対」に対してどのくらいのレベルにあるのか、その人の課題は何かを具体的に把握します。弊社では、品質レベルをAランク~Dランクに分類する「ランク制」をご提案することも多いのですが、「感動レベル」「良い」「普通」など、応対品質のレベルが感覚的に理解しやすいようになります。

モニタリングが品質に反映されるかどうかは、フィードバックもカギを握ります。フィードバックでは、モニタリング結果をただ読み上げるだけでは次につながりません。一人ひとりのコミュニケーターへのきめ細かな指導が可能になってきます。モニタリングでは、一人のコミュニケーターについて複数の課題が見つかることがほとんどですが、いっぺんに取り組むことはできません。応対品質にとってどの要素が最も影響を与えているかを見極めたうえでコミュニケーター本人と共有し、ロールプレイングなど改善への糸口となるショートトレーニングを実施することが肝要です。

また、モニタリング結果を集計分析をすることも大切です。モニタリング結果の数字を分析してみると、日頃、気づけていなかった変化を発見することができます。具体的には、コールセンター全体の品質レベルや経年変化、チームや部門ごとの結果やばらつき、応対の特徴、課題も見えてきます。それらの結果から、今後の改善にむけての対策を検討するのです。

これらの結果から、コールセンター全体としてのトレーニング計画を立案することも有効であり、全体的なレベルアップを見込むことができます。モニタリング結果を活かすことで、コミュニケーター個々人の課題はフィードバックを主体に指導しますが、下位層を中心とした対策、センター全体としての施策など多面的な取り組みが可能になります。また、応対以前にツールやオペレーションに課題が見えてくるケースもあります。スクリプトやツールの使いづらさが応対品質に悪影響を及ぼしている場合などは、これらの改訂を検討することも必要です。

どうでしょうか。品質管理の施策としてモニタリングの基本的な流れをご説明しました。次回は、モニタリングと混同されることも多い「ミステリーコール」を始め、コールセンター外部も含めた品質管理の取り組みについてご紹介したいと思います。

コールセンター・コンサルタント 古館良子

サービスのご紹介

コールセンターの応対品質を覆面調査により把握します。自社のセンター調査だけではなく、同業他社との比較をすることで、業界全体の動向も把握することが可能です。

コールセンターの応対品質向上のためには、第三者の視点で品質レベルを把握することが大切です。市場通信では、事前に設計した綿密な調査計画に基づいたモニタリング調査を実施します。