どうする?下位層のコミュニケーター問題

コールセンターの現場では、毎日多くのコミュニケーターが応対をしています。センターの規模にもよりますが、数百人にのぼるセンターもあります。応対品質は個々のコミュニケーターによって決まる部分が大きいため、センターではできる限り品質を標準化すべくツールの整備やトレーニングの実施などに努めます。

その結果、デビュー当時は慣れておらず、おぼつかない対応でもトレーニングを重ねることによって、一定の品質まで引き上げられるコミュニケーターがほとんどです。その後、個別に苦手な分野への対応によって徐々にスキルアップを図る、というのが一般的なパターンです。

ところが、いくらトレーニングや指導を丁寧にしても、頑としても動かない層が存在します。応対品質が非常に低く、モニタリングスコアなどで見ると常に下位にあたるグループで、感覚的には全体の5~7%程度です。規模に関わらず多くのセンターで見られます。

このグループ層は、応対に関して何らかの指導を受けても、なかなか改善が見られません。自らの応対に誤った自信を持っていて改善する意志がない、あるいは対人コミュニケーション能力自体に問題があり、改善の意志はあるもののどうしてもスキルが伸びないなど。

様々な理由がいくつかありますが、今後指導をしても改善へのきざしが見えない人も少なくありません。

この層は、品質が著しく低いため、この層を改善することでセンター全体の品質改善につながるのではないかと、この層向けの研修のご相談をいただくことも多いのですが、効率や効果の面から言うと、あまりお勧めできません。

確かに、非常に長い時間と労力をかければ、改善される可能性はゼロではありません。ですが、そのためには実際に指導にあたるSV(スーパーバイザー)が稼働を割いて指導にあたらなければなりません。

ただでさえSVはさまざまな業務を抱えていることが多く、その負担は決して小さくありません。しかも、それまで下位に定着していた人たちを指導する場合、気持ち的な負担も大きいと言えます。

個別の面談から始まり、きめ細かな指導にあたっても、果たしてそれに見合うだけの成果(=品質の引き上げ)が期待しづらいのです。

よくSVからも同様の相談を受けますが、「現在、日常のなかで人材育成に当てられる時間は何%ぐらいありますか?」「その貴重な時間を、一人か二人の一番困った人に使ってしまうのではなく、伸びしろの大きい層に向けて効率よく使うのがお勧めです」とお伝えしています。

みなさん、ホッとした表情を見せます。

センター全体の効率的な運営を考えても、引上げの難しい下位層対策に時間を使うよりは、今後改善の可能性が高い、伸びしろの大きい人材への指導にあてるべきです。中間層の引き上げはその代表的な例ですが、同じ労力でいかにセンター全体にとって効果が高い施策を実施するかが重要なのです。

なお、下位グループの場合、コミュニケーターという職業への適性が不足している人が多く、端的に言えばコミュニケーターに向いていないのです。それは本人もわかっている場合も多く、できるならば、データベースや送付物の管理やシフトなど業務系の補佐など、別の職種への配置転換を検討することも選択肢の一つと言えるでしょう。

ご参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

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