コールセンターの応対品質・SV育成の関係とそのトレンド

コールセンターの応対品質・SV(スーパーバイザー)育成の関係とそのトレンド

ここ数年、コールセンターの応対品質のトレンドは大きく変わりつつあります。現在、弊社のコールセンターへの教育・研修、ならびにコンサルティングは、目指すべき応対を実現したり、より本質的なお客さまに心からお喜びいただける応対へ切り替えたりと、多くのプロジェクトが進行中です。

これまでコールセンター業界では、敬語や話し癖などのマナーを大変重視してきました。一説によると、日本でコールセンター業界が産声をあげた頃、最初の応対指導にあたったのが航空会社の元CA(当時のスチュワーデス)だったため、折り目正しいマナーが徹底されたともいわれています。

その名残からか、「お客さまが笑うのはよいが、コールセンタースタッフが笑うことはけしからん」といった暗黙のルールが今でも根深く残っています。そのため、こちらは笑ってはいけないので、お客さまが冗談を言ってきても、「しーん・・・」となる訳です。

また、多くのコミュニケーターが自分らしさ、人となりを出してはいけないと思っていることもあり、そのせいか会話は受け身になり、なるべく自由な展開にならないような会話になってしまいます。

そのような応対の傾向をセンター上層部の方々にご報告すると、みな口を揃えて「そんなこと、誰も求めていないのにどうしてそうなるのか?」と不思議に感じるようです。

「営業担当だったら雑談を大切にし、人間関係を作ってから提案に入るのがオーソドックスな流れだが、最近のコールセンターも営業数字を求められるのにどういうことなのか?」とも言われます。

これにはスーパーバイザーの育成方法が影響していると考えています。多くのコールセンターではスーパーバイザーをコミュニケーター層から順次引き上げていますが、職務が全く異なるのにも関わらず、スーパーバイザーとしての研修を受けないまま、見よう見まねで管理職としての業務をこなしています。当人からすると、かなり不安な状態で、手探りでオペレーションを回しています。

スーパーバイザーが担当する業務はオペレーション運営、シフト管理、レポート業務、人材育成、品質管理など多岐にわたります。日々のオペレーションをスムーズに回すための業務(手あげ対応、エスカレーション、周知など)は管理者としての教育を受けていなくても何とかこなせますが、コミュニケーター育成においてはぐっと難易度が上がります。

そもそも、応対品質についての深い理解もないままスーパーバイザーになった場合は、応対の何がよくて、何がいけないのかは自分の経験だけで判断をするしかありません。

現在、コールセンターでスーパーバイザー職についている方々がまだコミュニケーターだったころは効率重視のセンターだった場合も多く、傾聴や共感力よりも、いかに効率的に間違いなく応対をするのかが大切だったはずです。

そんなときの頑張りが認められてスーパーバイザーになった自負もあり、自分のやってきたこと、教わってきたことを、今度は自分の元で働くコミュニケーターに指導をしてしまいます。

そうなると、一昔前のトレンドにコールを導いていることになるのでは?!

また、コミュニケーター指導イコール、マイナスの部分をみつけて指導することと捉えているスーパーバイザーも多くいます。残念ながら、マイナス点をすべて指導して、それを消せたとしても、できあがったコールは理想の応対にはなっていないのです。

このように、管理者としてのトレーニングが不足しているスーパーバイザーの指導は、本来最も重視すべき、「どんなコールを実現すべきか」「そのために何を指導すべきか」を前提としていないことが大きな問題となります。

そのため、せっかく定期的なモニタリングを実施し、センター全体の品質レベルやスキルの傾向、長所短所を把握して教育プランを練っても、肝心の現場での指導とかけ離れてしまうこととなるでしょう。

この問題は根深く、スーパーバイザーに品質とは何か、指導はどうあるべきかといった教育を施すことが本質的な解決策ではあるのですが、長期的に取り組む課題であり、センターの品質改善は待ったなしで取り組まねばなりません。

そこで、弊社では、日常の指導にモニタリングやフィードバックで把握した課題を指導するためのカードを供給しています。

このツールは、「チャレンジカード」などと名前を付けているのですが、モニタリング結果のフィードバックの際に定めた、「今後心掛けたい課題」をコミュニケーター自身に手書きで書いてもらいます。

コミュニケーターには、この「チャレンジカード」を机の上に置いて業務に当たってもらい、スーパーバイザーはその人の課題をカードで確認しながら指導をするため、自身の経験則のみにとらわれない指導ができるメリットがあります。

こうしたツールでスーパーバイザーをサポートすることは、実際の指導上、非常に有効ですが、長期的にはやはり、スーパーバイザーをいかに養成するかが大きな課題であることは変わりません。

「たたき上げ」のスーパーバイザーには、現場をよく知っているという長所もありますが、コミュニケーターとは別の職種であるという前提で、そのための教育をすることはもはや必須ではないでしょうか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

コールセンターの要であるスーパーバイザーへの研修は、センターの実情に合わせて柔軟にカスタマイズした研修カリキュラムをご提供します。「わかる」を「できる」に変える実践型トレーニングです。

コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質の改善をお手伝いします。