コールセンターのお客さま応対への「あるべき姿」を考える!

コールセンターのお客さま応対への「あるべき姿」を考える!

多くのコールセンターでは、品質向上を目的とした定期的なモニタリングと、そのフィードバックを行ってコミュニケーター育成に力を注いでいます。

こうした一連の地道な活動は、品質向上につながる一方で、時間とパワーがかかる割に実質的な効果が感じづらいという声もいただくことがあります。

モニタリングの成果が上がりづらい原因はいくつか考えられますが、よく見られるのが、モニタリングシートとその上位概念である「応対のあるべき姿(理想形)」が具体的かつ明確にリンクしていない、というケースです。

この現象は、応対品質が一定レベルをクリアしているセンターでよくみられます。既にある程度の水準にあるにもかかわらず、「さらなる品質向上を!」などと漠然とした方向性を提示されると、それぞれのSVやコミュニケーターが考える理想が異なり、結果としてセンターで統一性のない応対が蔓延してしまいます。

コールセンターと一言で言っても、各センターのミッションや応対範囲、お客さまに感じて欲しい満足は大きく異なります。

わかりやすい例でいえば、同じクレジットカードの問い合わせ窓口であっても、各カードの持つ機能やブランド、お客さまが支払う会費は様々で、それぞれのカードの特性に従ってセンターが目指すべき応対は違うことでしょう。

年会費無料のカードであれば、多少のつながらなさや効率中心の応対は許されるかもしれませんが、年会費が十万円以上のカードの場合は、電話はすぐに繋がることは当たり前で、その上で上質なサービスレベルが当然求められるはずです。

このように、それぞれのコールセンターが目指す理想形を明確にすることは非常に大切なことです。私たちは、これまでに数多くのコールセンターの「あるべき姿」をクライアント様と一緒に検討してきました。

今回はその検討の進め方やポイントについて整理をしたいと思います。ここでいう「あるべき姿」はミッションやビジョン、行動指針などといった用語で定められることも多いのですが、いずれも理想形を明文化したものです。

「あるべき姿」の検討をする際、現場を一番知っているSV(スーパーバイザー)やコミュニケーターの意見をとり入れるのはどうか、といったご相談をいただきます。その際、現場に近い方に参加いただくメリット、デメリットを丁寧にお伝えしています。

中でもメリットは、現場を熟知し、具体的な問い合わせ内容やお客さまのニーズを理解しているため、現実感のある意見交換が可能となる点が大きいポイントです。

一方で、これらは現在の応対を明文化する作業ではなく、この先5年、10年と使えるメッセージを作成する必要があり、その企業の将来のビジネス戦略を踏まえて、そこからコールセンターに求められることを整理していきます。

例えば、これまでは身近な企業として事業展開してきたが、今後はスタイリッシュな企業として事業の舵を切ることが計画されていれば、コールセンターもそれに従うことが必要です。

ところが、現場に近い方ほど、現状に足を取られやすく将来を見据えた判断がしづらいのも事実です。

したがって、「あるべき姿」の検討にあたっては、まずはセンターの今後の発展について関わる部門や担当者と議論を深めるほうがよいでしょう。

ただし、あまりにもイメージが遠く、手が届きそうもない理想形を作ってしまっては、現場の理解や共感を得ることは難しいため、検討の後半に現場の方との意見交換の場を設け、その反応を見ながら、意見交換を通じて賛同を得ていくプロセスが不可欠です。

私たちがよく行っている検討のスタイルは、4〜5時間といった長めの打ち合わせを数回設定し、1回ごとの打ち合わせでとことん議論を尽くし、その結果を資料にまとめ、それをもとに次の打ち合わせで更に検討を深めるといった具合です。

打ち合わせの中で熱い議論を交わし、満足な内容に近づいてきた感触があっても、一定期間後に冷静に見つめ直すと、内容の偏りや内容自体の不足、整合性の甘さに気づくなど、また立ち戻って検討が必要になることが少なくありません。

また、初回の議論では、一旦将来のビジネスのあり方にまで話を広げるため、途中で着地点が見いだせなくなることもしばしばです。それでも議論を重ねるうちに、徐々に方向性が定まってくるものです。

「あるべき姿」のアウトプットは、長文で読ませるようなものではなく、心に響くメッセーを端的に記したものです。そのため、メインのメッセージが確定したあとは、その補足説明をまとめていきます。

そうすることで、受け手によって解釈が違わないようにします。ここまで検討が進んだ段階で、現在のコールセンターとお客さまとの具体的な会話や期待値などを踏まえて、情報を整理します。

とくに、現在のセンターの弱い部分については具体的な情報を示すことで、これまでの応対との違いを明確にします。例えば、受け身な体質が弱点であれば、「聞かれたことに答えるだけではなく、お客さまの心の内(うち)とお話に耳を傾け〜」などと書いていくイメージです。

幾度となく議論とブラッシュアップを重ね「あるべき姿」が完成したら、その文書が独り歩きしてもしっかりと着目されるように、資料としての体裁を整えます。

過去のクライアント様の中には、クリエイティブ会社にメッセージカードなどの各種の制作を依頼し、大きなポスターサイズのものは額装をして、センター入り口に掲示していました。

額装されたメッセージを見たとき、打ち合わせではExcelで作られていた質素な資料が格段に見違えるものに変化したことに、私たちも感慨を覚えたものです。

「あるべき姿」が完成しても、そこで終わりではありません。ある意味では、そこがスタート地点ともいえるでしょう。応対の拠り所となるメッセージを現場に伝え、共感を得て、浸透させ、コールを変化させていく必要があります。

この「あるべき姿」をもとに「コールセンターのあるべき姿をコールの現場で反映させる!」というコラムもまとめております。是非お読みください。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

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