コールセンターのあるべき姿をコールの現場で反映させる!

コールセンターのあるべき姿をコールの現場で反映させる

前回のコラムでは『コールセンターのお客さま応対への「あるべき姿」を考える!』について、まとめました。今回は、応対の理想としての「あるべき姿」を現場に伝え、かつコールに反映させ、最終的にお客さまへ直接お届けするまでのプロセスについて述べたいと思います。

以下は、「あるべき姿」をコールセンターに展開する際のプロセスの一例です。

【ステップ1】お客さま応対の「あるべき姿」の作成

こちらは以前のコラムです。『コールセンターのお客さま応対への「あるべき姿」を考える!』を先に一度ご参照ください。

【ステップ2】「あるべき姿」に基づいたモニタリング基準の作成

(1)応対の「あるべき姿」をゴールにしたモニタリングの評価基準を作成します。

(2)その際、現在のモニタリング指標に足し引きするのはなく、一旦はゼロベースで検討することがおすすめです。

具体的にどんな応対をすると「あるべき姿」なのか、「あるべき姿」にはどんなマインド、スキルが必要なのかといった議論を重ね、必要な項目を洗い出します。

そうしていくと、今までのモニタリング項目において、今後も必要になるもの、手放すものが整理されます。

(3)モニタリング項目が確定した後は、項目ごとの採点基準をまとめましょう。

【ステップ3】「あるべき姿」の啓蒙・共有のための教育

(1)新たに作られた「あるべき姿」をセンター内で告知し、その後に教育を行います。一連のプロセスのなかでも最も重要な部分です。

(2)「あるべき姿」は、作成した担当者にとっては思いの詰まったものですが、受け取る側からすると、日常的に供給される情報の延長線に過ぎず、そのままでは積極的に理解をしようという気持ちにさせるものではありません。

そのため、発表するタイミングや場面、伝え方を丁寧に設計する必要があります。

(3)弊社では、通常、コミュニケーターに伝える前に管理者教育を展開します。「あるべき姿」の作成背景、具体的にどういう応対を作りたいのか、今の足りていない部分はどこか、項目毎の詳細な内容を共有します。

→スーパーバイザーはその後の活動のキーマンになるため、「あるべき姿」に思いをのせて、自分のことばでコミュニケーターに説明できるレベルまで理解度を引き上げます。

→最も有効なのは、プレゼンテーション研修の要素を組み込んだ発表形式の演習です。全員の前で、「あるべき姿」を自身の言葉を使って説明してもらうのです。事前にここまで実施しておけば、コミュニケーターに伝える段階になったときには、賛同者が多く育っているはずです。

【ステップ4】モニタリング基準の理解およびスキルの実践教育

(1)新たに導入されるモニタリング基準を発表し、教育を実施します。モニタリングシートは一見すると当たり前に思える項目が並んでいるため、フォーマットをがらりと変えない限り、コミュニケーターには以前と同じようなものに見えます。そのため、何が変わったか、何が大切なのかを理解することは難しいでしょう。あまり興味をそそられる資料とはならないことが多いのです。

(2)しかし、目指すべき応対を実現するには、「目指すべき応対とは何か」、「それに必要なマインドやスキルは何か」ということをコミュニケーターに考え、納得してもらう必要があります。したがって、新モニタリングシートを充分に理解するための教育は欠かせません。

(3)例えば、20項目程度のモニタリングシートの説明をする場合、1項目1分間説明すると20分間。2分かけると40分間の時間が必要となります。また、残念な応対や理想の応対を実際に聞くことも有効なので、やはり最低でも1時間程度の研修を設けることをおすすめしています。

(4)その上で、とくに重要なスキルやセンターが苦手とするスキルは、実践練習もするとよいでしょう。ここまでしてはじめて、コミュニケーターが目指すべき応対の全体像を理解するようになります。

【ステップ5】新モニタリング基準による定期調査

(1)新モニタリング基準での初回の品質調査を実施します。実際の評価の前に、採点をする担当者間でカリブレーション(評価のすり合わせ)をしておきましょう。

(2)このとき初めて一定量のコールを評価するため、新しい基準のつけづらい部分なども判明します。場合によっては、この段階でモニタリング基準を一部修正する必要も出てきます。

(3)初回の評価が終了し、集計を取ると、得点が大きく伸びたコミュニケーターと、逆に大きく下がったコミュニケーターが出てくることでしょう。目指すべきものが異なるため、モニタリング基準の変更前とは評価が異なっても不思議ではないのですが、下がったコミュニケーターのケアは大切です。

事前にメンバーをチェックしておき、結果を伝える際に評価が下がった背景や改善策を共に考えるなど、きめ細かいフォローができるようにしておくのがよいでしょう。

(4)モニタリング結果は、個別のコミュニケーターに戻して終わりではありません。その後の集計分析が大切になってきます。項目ごと、管理SVごと、入社年次ごと、複数のセンターがある場合は拠点ごとなど、様々な角度から分析することで、今後の対策が明らかになってきます。

(5)また、新モニタリング基準の初回の結果は、その後のひとつの指標となるものです。その後、このときのスコアからの推移をウォッチしてゆくことになります。

【ステップ6】調査結果のセンター内共有

(1)結果のレポートが完成したら、センター内で結果を共有し、今後の改善に活用します。

(2)弊社では同じレポートでも対象者を分けて、複数回の報告会をすることがあります。センターのトップ層向け、SV向け、品質担当者向け、コミュニケーター向けなど、対象者によって着目すべき点やメッセージが異なるからです。

せっかく時間と体力をかけて完成した品質レポートは、その後の活動に充分に活かしていきたいものです。

以上が、「あるべき姿」の検討から品質評価までの一連の流れです。いかがでしょうか。
このように細かく業務を割って、時間をかけて進める場合もあれば、状況に応じていくつかをまとめてテンポよく展開する場合もあります。

大切なのは、管理者とコミュニケーターそれぞれに「あるべき姿」を理解してもらい、実際のコールに反映させることです。「あるべき姿」が絵にかいた餅にならないよう、しっかりと浸透させていきたいものです。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

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