コールセンターにおけるオープニングとクロージングの深い関係とは

コールセンターにおけるオープニングとクロージングの深い関係とは

数多くのコールセンター品質調査をしていると、お客様とセンターとの会話においていくつかの重要なシーンがあることがわかってきます。

その重要なポイントのひとつが、オープニングとクロージングです。

そのオープニングやクロージングの良し悪しによって、お客様の態度や満足度は変化します。電話をする側に立ってみれば、当たり前の話と言えるでしょう。お客様は最初に聞くコミュニケーターの声がはつらつとして感じがよければ気持ちがいいですし、その逆で覇気もなく事務的で単調な声であれば、お客様も低めのテンションになることでしょう。

コミュニケーター向けの研修では「オープニングに自分の一番ステキな話し方をしようと心がけている人は手を上げてください」といった質問をよくします。すると、挙手する割合は1割程度でしょうか。「オープニングが第一印象を決める」と教わっているはずなので、その意味は理解しているものの、実践にはそこまで至っていないのが現状です。大変、もったいないことです。

当社boosterではミステリーコール調査を数多く手がけています。

年間、相当数の録音をしますが、録音時のルールとして、どのセンターに対しても同じシナリオ、同じテンションで話すことが定められています。シナリオはともかく、テンションをそろえるのは、お客様の態度として優しい人、冷たい人などの差があると調査結果に影響を与えるためで、一定の話し方で問い合わせをしています。

しかし、いくら録音ルールを定めていても、オープニングの質にお客様役が引っ張られるケースがあります。とても感じのよいコミュニケーターが応対した場合はよいリズムで会話が進み、コミュニケーターも話しやすい雰囲気になりますし、コミュニケーターが冷たいとお客様役も低いテンションになり、どことなくきまずい会話になるといった感じです。

そのようなこともあり、コミュニケーター研修では、"オープニングは自分の一番ステキな部分を全開に出して、1件1件こだわりましょう"と指導しています。コミュニケーター誰もが優しいお客様と出会いたいと願っているのであれば、お客様の優しさを引き出すようなオープニングが重要なのです。

オープニングは、声のトーンは温かみがあり、お出迎えする気持ちや感謝があり、お客様のお役に立ちたい姿勢が感じられるものであれば完璧です。センター全員が金太郎飴のようにそっくりな言い方では「人となり」が感じられません。一人ひとりの個性や人となりが感じられるものがよいでしょう。

次に述べるのがクロージングです。

当社boosterでは、クロージングに「不明点の確認」も含めています。コールセンター業界では、不明点の確認がほぼ業界標準となっているといえるでしょう。その分、「不明点確認のフレーズを言うこと」が重要視され、お客様の不安や疑問をすべて解決して会話を終える、という本来の目的が薄らいでいるように思います。

これもコミュニケーター研修でのやりとりですが、「不明点の確認の際、どのくらいの割合でお客様から質問されますか?」と聞いています。コミュニケーターの返答はセンターによってだいぶ差がありますので、ぜひ貴センターでも確認してみてください。

ほぼ質問はされない~1割程度と応える層が多い場合は、ただ言っているだけになってしまい、お客様にはメッセージがきちんと伝わっていないのでしょう。2~3割の確率で質問をされるのが妥当なところでしょう。4〜5割以上の場合は少し注意が必要です。

これまでの通話に関する内容を聞かれているのであれば、こちらの説明がわかりづらかったのかもしれません。全く別の質問をされている場合は、満足度が高いので他の相談もしたくなったといえるでしょう。

実際、あるコールセンターで上質なオープニングとクロージングのトレーニングを展開したところ、クロージング前の不明点の確認でお客さまから質問される割合が高くなりました。コミュニケーターによっては、通話時間が1.2倍に長くなった人もいました。

"効率が落ちる点は、大丈夫ですか?"と不安に思うかもしれませんが、

クライアントは"全く問題ありません。確かに通話時間が長くなっているコールは少しありますが、実際は再コール率(一定期間内に再度お客様が電話をしてくる割合)が低下しています。」と言われます。

さらに、"これまでなかった新規案件(アップセル、クロスセル等)の相談をいただけるコールが出て、驚いています。"としています。

米国の調査結果ではクロージングの質が高いと、顧客満足度調査の結果も高くなることがわかっています。現在の貴センターのオープニングとクロージングの質はどうでしょうか。ワンシーンに着目してみると、意外なことが発見できるかもしれません。ぜひ、じっくり聞いてみてはいかがでしょうか。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

覆面調査により応対品質を把握します。自社のセンター調査だけではなく、同業他社との比較をすることで、業界全体の動向も把握することが可能です。

「感じのよい応対」を目標として、学習効率の高いカリキュラム。「わかる」を「できる」に変えるため、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れた実践型の研修です。