コールセンターのスーパーバイザー(SV)が持つべきチカラ

コールセンターのスーパーバイザー(SV)が持つべきチカラ

応対品質の向上を目指すコールセンターの多くは、モニタリングチェックを実施しています。

モニタリングは理想のコールを実現するために必要なスキルを中心に評価するもので、

理屈の上ではモニタリングシート上の項目をすべてクリアすれば理想のコールが実現できるはずです。

しかしながら、実際には、モニタリングシート上のスキル習得 イコール 理想コールの実現とはいかないようです。

例えば、お客さまの満足を最優先とするセンターで「質問」のスキルがモニタリングシートに挙げられており、センター側の意図としては、「お客さまの状況を適切に理解したうえで、その方に合った提案をする」という目的があったとします。

ところが、その趣旨を理解せず、ただ機械的に質問をするだけではお客さまのお気持ちに沿った提案ができるはずがありません。

そもそも、「理想のコール」や「KPI」など、応対品質の管理部門やマネジメント層で交わされる議論と現場での指導には少々距離があり、そのままではコミュニケーターに伝わりづらいものです。

コミュニケーターにはセンターのビジョンや使命、行動指針などを一つひとつ丁寧に説明し、それらと「なぜこの項目がモニタリングシートにあるのか」の意味を結び付けて落とし込むというプロセスが必要です。これを担うのが現場のSVです。

SVはコミュニケーターとして働いていた頃とは異なり、その場のひとつのコールだけに着目するのではなく、センター全体を意識しつつ、自分の担当するチーム全体の品質を向上させることが求められます。

このときSVに求められるのは、センターの方針をまずは自分がしっかり理解し、その理解をもとに現場に浸透させることですが、個々のコールセンターの品質の捉え方は様々です。「品質」という言葉ひとつでもその使われ方はだいぶ異なります。

あるセンターでは「つながりやすいことが最大の品質」と定義し、そのために効率よくコールを受けることが品質の最重要課題であるとし、コミュニケーターはお客さまとの会話で最短ルートを目指します。

それとは逆に、「個々のお客様との向き合い、寄り添うこと」が品質と考えているセンターは型どおりのきれいな対応だけでは高品質とは評価されません。

また同一のセンターであっても、以前は効率一辺倒であったセンターが顧客志向の強化に伴って顧客満足を重視するようになったり、質問に答えるだけだった受け身のセンターが、品質改善の一貫としてひとりひとりのお客さまのニーズを聞いて対応するようになったりと、理想のコールは時として変化するものです。

自身が過去に受けた教育とは異なる方向性を目指しているとしても、そこにとらわれすぎずに、現在目指す方向をベースとして指導をするのがSVの仕事です。

センター方針の理解にあたっては、コミュニケーターより数段深い理解が求められます。つまり、センターが何を目指しているかを、自分自身の言葉で語ることができ、そこから理想の会話を作れるようになることです。

つまり、マネジメントが用意した「説明文」をそのまま読み聞かせるのではなく、目指すべきコールを自分の言葉で語り、どんなスキルを使ってどのような声で会話するのか、具体的なイメージを持って、それを伝えられるということです。

ここで具体例をひとつご紹介しましょう。

たとえば、前述にあった「質問」ですが、このスキルをいい状態で現場に定着させることはとても難しいものです。例えば、センターの方針として、One to Oneの応対の実現にむけて双方向の会話づくりを強化したいと考えています。

すると、現場のSVは朝礼などの周知の際、「今日は、モニタリング項目2.1の『質問をしているか』の項目を重点にコールをしてください。よろしくお願いします。」と指示を出します。

コミュニケーターは素直に指示に従い質問をするようになりますが、お客さまが返してきたお返事を受け取ることなく、先の会話を展開してしまいます。そうした場合、お客さまは「なんのために質問されたの?」と違和感を覚えます。

これは大変よくある事例です。本来であれば、「なぜ質問をするのか」というような意義を合わせて伝えなくてはいけないのですが、なかなかそういった指導は難しいようです。

このようなことから、理想の会話(応対)をつくるためにSVに求められるのは「聞きかた」と「伝え方」が重要であると考えています。「伝え方」ならコミュニケーター時代に培ったスキルと同じではないかという声が聞かれそうですが、扱う内容が異なれば求められるスキルも変わってくるものです。

<SVに必要なチカラとは>
(1)聞きかた

コミュニケーターにとっての「聞く力」が、お客さまの話に耳を傾け、お客さまの言葉の内外にある要望を受け取る力だとすると、SVにとっての「聞く力」はもっと多面的かつ深いものです。


SVはセンター全体の方針に照らして個々のコールの品質を見極め、指導に活かさなければなりません。

したがって、企業視点(センターとして良いコールかどうか)、顧客視点(お客さまからみて良い対応かどうか)の両方でお客さまとの通話を聞く必要があるのです。

センターの方針に沿っていても、お客さまとして聞いたときに足りないところがあれば、何が足りないのか、どのスキルを充実させればよいのかを判断します。

さらに言うなら、複数のコミュニケーターの応対を聞いて、なんらかの傾向がないか、という点にも注意して聞く必要があります。

個々のコミュニケーターの課題ではなく、センターとしての課題があるのなら、集団としての対処が必要になるからです。長年、SVとして働いている人はお客さま視点が薄らいでしまっているケースも多々あります。

(2)伝えかた
課題を的確に聞き取る「聞きかた」ができたとしても、それをコミュニケーターに理解できるように伝えられなければ最終的な品質向上にはつながりません。

コミュニケーターに物を伝える立場(伝道者)として、会社の方針を噛み砕いて伝える。コミュニケーターの身になって、相手にとってわかりやすく、また心を動かすことができるように伝える。

これは、とても難しいことです。ただ「ダメ出し」をする、表面的な問題点を伝えるといった態度ではもちろんコミュニケーターに伝わりませんし、本当の意味での改善につながらないのは自明のことです。

SVが表面的な指導しかしない場合、コミュニケーターがそれをなぜやるのか理解ができていなくても、「実施すること」ことが目的になってしまうため、コールがおかしな方向に導かれる危険性もあります。

相手に伝えるというのは、小さなプレゼンテーションのようなものですし、SVの個性によっても異なるので、全員が同じ伝え方をすればよいとうものでもありません。

自分らしい伝え方(具体的には声の出し方や言葉の選び方にいたるまで)を習得する必要があります。

また、ただ内容が優れているだけでも不十分で、話し方も十分に磨いていくことが大切です。モニタリングシートに必ずある「笑顔」「優しい印象の話し方」「スピード」「傾聴(あいづち)」などの技術をふんだんに使うことで、魅力的な話し方の見本となるのです。

時折、センターの朝礼などに立ち会うこともありますが、SVが早口だったり、雑な話し方、無機質な話し方だったりすると、その下で働くコミュニケーターの話す技術が上がりづらいような気がします。

また何よりもお客さま応対、コールに対するこだわりや熱意なども大変重要で、コミュニケーターの気持ちを動かすような伝え方が大切です。

いかがでしょうか。

今回は応対品質におけるSVに求められるチカラについて紹介しました。センターのSVの「聞きかた」「伝え方」に着目して振り返ってみると、さらに伸ばすべき点についてヒントがみつかるかもしれません。


参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

コールセンターの要であるスーパーバイザーへの研修は、センターの実情に合わせて柔軟にカスタマイズした研修カリキュラムをご提供します。「わかる」を「できる」に変える実践型トレーニングです。

コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質の改善をお手伝いします。