コールセンターの問題解決に必要な質問のスキル
コールセンターの中には、商品の受注や予約の受付など、特定の要件のみを受け付けるセンターもありますが、多くのセンターでは、さまざまな内容に対応しなければなりません。たとえば、ひと口に「製品に関する問い合わせ」と言っても、使い方から故障対応、部品や消耗品等についての質問と、カバーする範囲は多岐にわたります。
お客さまの抱える課題を解決するためには、まずは「何が問題か」を把握することが重要です。問合せ対応というと、「いかに回答するか」に意識が行ってしまいがちですが、そもそも、課題を正確に把握できていなければ適切な解決策を提示することはできませんし、適切な回答ができなければ顧客満足や企業・商品イメージの低下につながりかねません。
ただし、ここで注意しなければならないのは、お客さまは質問の一部だけしか口にしないことが多い、ということです。ききたい内容をうまく言い表せない、恥ずかしいからダイレクトに質問したくない・何となくききづらい、話す必要性を感じていないなど、理由はさまざまですが、私たちは、「お客さまの質問は『氷山の一角』にすぎない」と考えています。では、お客さまが口にしない内容を把握するにはどうしたらよいのでしょうか。
「『ログインできない』の裏にあった本当の要望」
ここで、ある会員制サービスのセンターで実際にあったケースを紹介します。
このコールセンターで、 「パスワードを忘れてログインができない」というお問合せがありました。メールアドレスをお聞きしてアカウントを確認し、パスワード再登録の方法をお知らせしました。ところが、お客さまは、すでにその方法を試したものの、パスワード再登録のために携帯電話にショートメールで送られてくる4桁のコードを受け取ることができないというのです。担当者は、その会員サービスのサイトからは4桁のコードが送信されていることを伝え、そのセンターでは対応できないこと、携帯電話のキャリアに問い合わせていただく必要があることをご案内して対応を終えました。すると、しばらくしてから、そのお客さまから再度ご連絡があり、携帯電話会社でも原因がわからないが、申し込んでいる定期購入の商品変更の期限が今日なので対応して欲しい、とのことでした。

お客さまは何か目的を持ってそのサイトにログインしようと試みたはずです。したがって、直接の問い合わせが「ログインできない」であったとしても、最初のお電話で何をしたいのか、ひとことお聞きしてもよかったのではないでしょうか。そうすれば、お客さまに二度ご連絡をいただくという事態は避けられたはずです。
このように、コールセンター の問合せ対応においては、質問は非常に重要なスキルと言えます。 そこで、今回は顧客対応における質問について解説していきたいと思います。
基本的な質問の構成
問題解決に当たって必要となるベーシックな質問の種類と流れは以下のとおりです。それぞれの質問の目的を意識しつつ、順を追って聞いていきましょう。
- 状況把握:
何が問題なのかを正確に、詳細に把握します
• いつからその問題が発生したか?
• いつごろから気になっていたか?
• 具体的にどうなっているか?どこが問題なのか? - すでに試したことの確認:
重複して案内することを避けるとともに、対応策を絞り込みます。
• ご自身で何か対処されたか?
• 以前に同じようなことがあったか?
• すでに他の部署や窓口に問い合わせているか? - お客さまの要望・期待の確認:
「最終的にどうしたいのか」を明らかにします。
• 最終的に何を望んでいるのか? - 今後のプロセスについての具体的な確認:
すぐにお答えできない場合や継続して対応が必要な場合は、連絡方法等を確認します。
• 急ぎの対応が必要か?
• どのような方法でご連絡すればよいか?
ひとつひとつの質問は基本的なもので、どれもそれほど難しいものではありませんが、応対中にはつい、「今どうなっているか」など聞きやすいものに集中しがちです。ヒアリング内容を整理しながら会話を進めることが肝要です。特に、3については、お客さまからの具体的な質問への回答に終始してしまうと、結局どうされたいのかを見失いがちです。もちろん、中にはシンプルな質問にそのままお答えすればよいケースが多いと思いますが、お客さまの質問に隠れた「真のニーズ」を見失わないようにしましょう。
質問をする際の注意点
また、質問をする際には気を付けなければならないポイントがいくつかあります。質問の仕方によって、お客さまからいただける情報には大きな違いが出てくるので、注意が必要です。
- 質問の背景を説明する
• 何のために質問をするのか説明してから質問する
唐突感のある質問はお客さまに違和感を与えます。
別の内容についての質問をする場合は、質問の背景や理由を添えると良いでしょう。
【質問の例】
「いま起こっている現象に関連があるかもしれないのでお伺いしたいのですが…」
「原因を知るため、いくつかご質問させていただいてもよろしいでしょうか…」 - 答えやすいように質問する
• 一度に複数の質問をしない
一度に複数の質問をすると、情報が交錯したり、答えが曖昧になりやすいため、
ひとつずつ丁寧に聞きます。
• 専門用語を避け、わかりやすい言葉で質問する
こちらがわかっている言葉でも、お客さまには理解しづらいことがあるので、
なるべく平易な言葉を選びます。また、社内で使っている用語とお客さまの表現が違う場合、
お客さまの言い方を使って質問します。
【質問の例】※あまり詳しくない方に質問する場合
△「ブラウザは何をお使いですか?」
〇「インターネットを見るときに使っている画面は、Google ChromeやSafariなど、
何をお使いですか?」 - 相手をサポートして答えを明確にする
• 「具体的にはどういうことでしょうか?」と深掘りする
• 「たとえば~という状況でしょうか?」と例や仮説を提示する
• 選択肢を示す
お客さまからの答えが曖昧な場合や、答えづらそうな場合、深掘りをしたりこちらから
情報を補足したりすることでお客さまをサポートすると答えやすくなります。 - 回答内容を確認しながら質問を進める
• あいづちやオウム返し、要約を用いる
お客さまの言葉を正確に把握しているか、誤解がないかを確認しながら質問を進めます。
最終的な回答内容が間違っていたり、ずれが生じたりしないようにするためです。 - お客さまの話に耳を傾ける:
• しっかりと話を聴く
質問するにあたっては、まずはお客さまのお話を聞くことが大切で、最後まで聞いてから
質問をします。あいづちなどを使って傾聴の姿勢をしっかりと示すのが基本です。
こうすることで、お客さまが安心して話をすることができます。 - お客さまの気持ちに寄り添う:
• 気遣いや共感を示す
• 親身さの感じられるトーンで話す
何か課題があってコールセンターに電話をいただいている場合、お客さまは不安や不都合を
感じているケースも多いので、お客さまの心情に共感し、寄り添うことが重要です。
特に質問する場合、単なる矢継ぎ早の「ヒアリング」になってしまわないようにしましょう。

「答える前に、聴く」
コールセンター業務では「お客さまの質問に答えること」が役割だと考えられがちです。しかし、実際にはお客さまの話を正しく“聞く”ことこそが、正確な回答や適切なサポートへの第一歩となります。
お客さまからの問い合わせには、内容が明確なものばかりではなく、「なんとなくおかしい」「うまく説明できないけれど困っている」といった曖昧な表現も多く含まれます。また、お客さま自身が問題の全体像を把握しておらず、断片的な情報だけを持っているケースも少なくありません。こうしたとき、コミュニケーターが一方的に答えを出そうとすると、かえって問題の本質を見誤ってしまうことがあります。
だからこそ、まずはお客さまの言葉にじっくり耳を傾け、「何を伝えようとしているのか」「どんな状況で困っているのか」を丁寧に引き出す姿勢が大切です。その際、ただ質問をするのではなく、安心して話してもらえる雰囲気づくりや、わかりやすい言葉での確認・整理が求められます。
「答える前に、聴く」。
この意識が、結果的にお客さまの満足度を高め、的確でスムーズな対応につながります。
いかがでしょうか。コールセンターにおいて「質問力」を高めるには、ロールプレイングを活用して質問への対応をトレーニングすることが効果的です。また、お客さまのお話を受け止める、共感する、といった多岐にわたるスキルの習得も欠かせません。質問への対応はお客さまの満足度を大きく左右します。品質向上のために、質問にフォーカスしてみるのはどうでしょうか。
サービスのご紹介
boosterでは、コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質の改善をお手伝いします。