コールセンターの応対品質を数値化する─モニタリング結果を活かす「ランク」の導入

コールセンターの運営において、応対品質を客観的に把握・改善するために欠かせないのが「モニタリング」です。弊社でもモニタリングのご依頼をいただくことは多いのですが、「モニタリングでは何点を目標にすべきか?」というご質問が寄せられます。
今回は、モニタリング結果を有効活用するための「ランク制」という仕組みをご紹介しながら、得点率の目安や活用方法、実際の事例を交えて、コールセンターの業務改善に役立つヒントをお伝えします。

1.モニタリングの評価基準は「自社にとっての理想的な応対」

モニタリングとは、コミュニケーターの応対内容を事前に設定した評価項目に沿ってチェックし、得点化する仕組みです。弊社では、満点を100%とする得点率で評価するシステムをご提案することが多いのですが、「何%取ればよいか?」という疑問が生まれがちです。
しかし、重要なのは「どのくらい取ったか」よりも、「自社の理想とする応対にどれだけ近づいているか」です。

モニタリングの評価項目は、「自社が理想とする応対」を100%とし、それを基準に設計するのが基本です。ホスピタリティを重視する企業であれば「共感的な返答」や「やわらかな口調」が高評価の対象となりますし、専門的なサポートが求められる現場では「説明の的確さ」や「論理的な構成力」が重要視されるべきであり、「よくある項目」をなんとなく並べただけでは意味がありません。
つまり、自社の理想とする応対に沿った評価項目の設定が大前提ということになります。

2.モニタリング得点率の目安:80%で「とても良い」

自社の理想とする応対をベースとした項目設定ができたとして、私たちは、目安としては以下のようにお伝えしています。

  • 90%以上:お手本レベルの応対
  • 80~89%:理想に近い「とても良い」応対
  • 60~79%:一定の基準を満たしている「普通」の応対
  • 60%未満:課題があり、改善が必要な応対

この時、評価基準に沿って採点をしてみても、評価結果と応対を聞いたときの印象が一致しない場合は要注意です。得点率が高いのに理想とする音声とは異なる場合や、逆にとてもよい印象なのに得点率が非常に低い場合などは、評価項目そのものや評価基準、得点のウエイトなどを見直した方がよいでしょう。

なお、コールセンターとしての目標を設定する場合はセンターの状況を鑑みて決めます。例えば、現状では「理想の応対」には遠く及ばないとすると、まずは「普通」レベルを目指し、そこから一歩ずつレベルアップする、という考え方は堅実で現実的なアプローチです。

事例紹介:応対方針を変えたのにモニタリングが追いつかない?

あるIT系コールセンターでは、初心者向けのサービス提供開始に伴い、これまでの「技術優先」から「親しみやすい説明」を重視する方針へと転換しました。
ところが、モニタリング項目が従来のまま「専門性重視」であったため、説明は詳細でも無愛想な応対が高得点を取るなど、現場とのギャップが生まれてしまいました。

この事態を受け、評価項目に「寄り添い」や「安心感」などホスピタリティ要素を追加。すると、得点と実感が一致するようになりました。その結果、「目指すべき応対」が何なのかが明確になり、コミュニケーターにとっても改善点がわかりやすくなりました。その後、数か月間モニタリングを継続的に実施したところ、全体的な応対品質の改善にもつながったのです。

「ランク制」で応対のレベルを可視化

モニタリングの得点をもっとわかりやすく、現場に浸透させる方法が「ランク制」です。
点数に応じて、上からSランク/Aランク/Bランク/Cランクなどのようにをランク分けします。

ただし、このランク名や区切り方は柔軟に設計できます。たとえば、Aランクを80%以上に設定して「非常に良い応対」として一括りにすることもできますし、80%以上と90%以上を分けるなど細分化することも可能です。逆に、低い層にフォーカスして、この層をいくつかに分けることもできます。コールセンターの状況に応じて、ボリュームゾーンを細分化して調整することが可能です。

また、ランクを設定する際には単なる得点率の幅だけでなく、「お客さまに自社ブランドのファンになってもらえる応対」「○○社としてふさわしいと胸を張れる応対」といった定義を加えることもできます。こうした言語化により、点数の高低だけでなく「〇%獲得すると、どのような応対が実現できるか」が具体的にイメージできるようになり、現場全体で共有しやすくなります。

コールセンターの品質改善に「ランク分布」を活用する

コールセンターの品質改善にモニタリングを活用する場合、一般的には全体の平均得点率に目が行きがちです。平均得点率はセンター全体のレベル感を示す重要な指標ではありますが、極端に高い(あるいは低い)値に影響を受けやすいため、どのレベル(層)がどれだけ存在するか(=分布)が重要になります。ランク制を導入すると、全体の品質分布を把握しやすくなるので、品質改善のための適切な施策を検討することが可能です。

たとえば、Aランク(上位層)が一定数いてもがCランク(課題がある層)イメージが多い場合、「下位層の底上げ」が品質改善のポイントとなります。また、良い層(Aランク以上)が少なく、大多数が中位層(Bランク)である場合は、「下位層の底上げ」に加えて、皆が理想の応対をイメージしやすいよう、Aランク以上を増やすことを意識するのが良いでしょう。
一方で、Sランクに近いコミュニケーターが多い場合は、「ロールモデルの共有」や「トップスキルの横展開」など、より高度な応対力向上策が有効です。

コミュニケーターの目標設定にも効果的

ランク制のメリットは、個々のコミュニケーターにとっても明確です。

「〇〇%を目指す」よりも「BランクからAランクへ」といった目標の方がイメージしやすく、達成感やモチベーションにもつながります。また、具体的なランクアップを目標とすることで、改善すべきスキルも明確になります。特に、品質に課題のあるコミュニケーターにとっては「どこから手をつけてよいかわからない」状態から脱却するきっかけになります。

ある問合せ受付のセンターでは、とても説明が丁寧で感じのよい担当者がいたのですが、いつもAランク(そのセンターでは上から二つ目)で、Sランク(最も上のランク)にあと一歩手が届かない状態でした。モニタリング結果を見ると、案内の内容を気に掛けるあまり、クロージングの挨拶や用件確認などの項目でしっかりとルール通りに実行していないことが多かったため、この点を修正すると、その後2回目のモニタリングでSランクに昇格することができました。この昇格は本人にとってとてもモチベーションアップにつながったようで、その後は「Sランクをキープします」と日々業務にあたっています。

モニタリング×ランク制で実現するコールセンターの品質向上

モニタリング結果を「ランク制」で可視化することで、センター全体の応対品質の現状を把握しやすくなり、改善施策の優先順位や指導方針も明確になります。

定期的にモニタリングを実施しているコールセンターの皆さまは、ぜひこのランク制を導入し、「応対品質の見える化」「現場へのフィードバック」「業務改善の推進」に役立ててみてはいかがでしょうか。

サービスのご紹介

コールセンターの応対品質向上のためには、第三者の視点で品質レベルを把握することが大切です。市場通信では、事前に設計した綿密な調査計画に基づいたモニタリング調査を実施します。